物損事故における、賠償請求範囲について

1 どのようなものが損害賠償としてみとめられるのか

物損事故での損害賠償として請求できるものは、積極損害と消極損害に分けて考えると、積極損害としては修理費等、消極損害としては、休業損害等があります。

そして、この損害賠償は民法上で金銭賠償を原則としています。(民法417条)
では、一般的に、積極損害・消極損害は請求できるのは当然だと考えられますが、慰謝料の請求ができるのでしょうか。

この点については、原則として、物損事故においては慰謝料は認められないと考えた方がよいでしょう。
判例は、「身体の損害とは異なり金銭によって代替することができ、損害賠償をうける事により精神的苦痛は除去されるため」としています。
慰謝料を認めた判例もないわけではないのですが、かなり限定された状況であり、特殊な事情がない限り、原則として認められないものと考えられます。

2 積極損害

請求できる損害として、積極損害についてはどのようなものがあるのでしょうか?

修理が可能な状態の損害であれば、当然に修理費が認められます

修理費については評価額が問題になります。評価額は中古市場価格を参考にします。その際に使う資料としては、オートガイド社の中古車価月報(レッドブック)等、市場価格がわかるものを用います。
修理費が評価額を超えてしまう場合は全損扱いになります。

全損扱いとならない場合は、一部損となり、修理にかかった実費が損害として認められます。

補修修理ではなく、パーツごと交換修理して欲しいという考えが、被害者にはあると思います。
この点につき、ある保険会社の約款(一部省略)によると、「修理費とは事故発生直前の状態に復旧するために必要な修理費であり、復旧に際して、部分品の補修が可能であり、かつ、その部分品の交換による修理費が補修による修理費を超えるときは、その部分品の修理費は補修による修理費とする。」とあります。

つまり、車の一部が破損してしまった場合に、部品の補修が可能な場合で交換と修理費を比した場合に、交換費が高くつく場合には、交換修理ではなく、補修修理によることを明記したものです。

修理費としての注意点の一つとしては塗装に関する料金が考えられます。
塗装に関する費用については、事故部分の塗装費のみが認められます。
事故部分との色の違いが気にいらないから、全部丸ごと塗装し直したとしても事故で破損した部分以外の塗装費は原則、認められません。

判例によれば、「他の部分との相違が明白になって美観を害する場合」で「美観が車両価値の大きな部分を占め」、「費用に大きな差が発生しない場合」全塗装を認める判例がありますが、原則として認められないものと考えたほうがいいかもしれません。

3 消極損害

休業損害についてはどの程度の損害を請求できるか。

この損害については、相当因果関係があることが前提ですが、個人的な利用(会社等もありますが)に関しては代車料、会社的な利用に関しては、休車・営業損害が考えられます。

代車料については、個々の事案により、被害者の車の用途、代替交通機関、必要性などを加味して判断されます。
休車・営業損害については、(1日当たりの平均売上-1日当たりの必要経費)×日数の計算式により算出します。
この計算式の必要経費目に関しては判例も見解が異なるものが多く、統一されたものではありません。

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