消滅時効について
消滅時効とは何か?
『時効』という言葉は一般的にもよく知られている言葉であると思います。
簡単に言えば、「時効が成立すると本来の権利の行使が出来なくなる」とイメージなされるとよいと思います。(厳密に言えば色々な学説もあり、相手方の援用等も問題となります。)
時効になると権利の行使が出来なくなってしまう恐れがあるので、示談や保険会社への請求等については、時効の進行状況に気を配る必要があります。
実際の消滅時効の期間は?
消滅時効はそれぞれの行為原因によって異なる点に注意が必要です。
商法上の時効や、民法上の時効も期間が異なります。
そして、時効の期間について知っておくべき事は、その期間の長短のみではなく、「起算点」も見落としてはいけない点です。
「起算点」とは、時効の始まりの地点を指しますが、これも法律により決められていますので確認しておく必要があります。
さて、肝心の交通事故に関連する民法上の時効については以下のようなものが挙げられます。
■ 自賠責保険会社に対する被害者請求
⇒ 起算点 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時
⇒ 期 間 3年 (ただし、平成22年4月1日以前に発生した事故については2年)
■ 自賠責保険会社に対する加害者請求
⇒ 起算点 加害者が被害者に損害賠償金を支払ったとき
⇒ 期 間 3年 (ただし、平成22年4月1日以前に発生した事故については2年)
■ 任意保険会社に対する請求
⇒ 起算点 加入する保険会社の約款に依ります
⇒ 期 間 3年 (ただし、約款により異なる場合がありますので、約款をよく確認しておく必要があります。)
■ 不法行為責任(民法709条)・運行供用者責任(自賠法3条)請求
⇒ 起算点 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時
⇒ 期 間 3年 (ただし、平成22年4月1日以前に発生した事故については2年)
※ 保険法改正(95条等)により、自賠責及び任意保険会社に対する消滅時効は3年に統一されています。
ただし、95条等の施行日は平成22年4月1日のため、これ以前に発生した事故については従前の規定によります。
時効の中断について
それでは、「上記の消滅時効の期間は絶対的なものなのか?」という疑問に思う方もいるでしょう。
そもそも、消滅時効の趣旨については「権利の上に眠るものは保護に値せず」と言われる通り、長期間行使しない事によりその権利行使を法律上認めないという点にあります。
この趣旨から鑑みれば、その意思を主張すれば当然に権利行使も許されると解されます。
この権利を行使する意思表示のことを「時効の中断」といいます。
時効の中断の効果は、いままでの時効の経過を無効とし、また新たに時効の中断を起算点として時効が進行します。
民法上の時効中断事由としては以下の3つが挙げられています(民法147条)
① 請求
② 差押え、仮差押えまたは仮処分
③ 承認
具体的には、自賠責保険の場合には「時効中断申請書」を提出する事により、保険会社から「時効中断承書」を貰う事で時効が中断します。
(この場合は①の請求)
被害者や保険会社からの一部支払いも上記③の承認となり時効が中断します。
ここで一点注意しなければならないのは、後遺障害の認定等で有利に進めるために、自賠責保険会社に対して被害者請求することがありますが、これは主体として加害者に対して行うものではないので、加害者に対する請求権については時効中断の効果が及ばない点に注意しなければなりません。(つまり、請求権はそれぞれ個別に判断されるという事です。)
示談等で交渉が長引くような場合には、消滅時効があることを念頭に置いて、時効が完成する恐れがあるような場合には、必要な手続きを忘れずに行う必要があります。